齧りかけの林檎
第1章 ● 真っ赤な君 ♀side
おい少年、
いいかげんにしてくれ。
お姉さんは寒いんだよ。
いや、君に掴まれてる手は熱いよ?
っていうか、
汗かいてるからね?
君も手がじんわりしてるけどさ。
さすがに緊張して手に汗握りますよ?
君はわたしの手、握ってますけどね!
明日も仕事があるので早く帰りたくて、
彼の着ている制服のブレザーのポケットに、
持っていたタオルを突っ込んでやった。
このままじゃ埒が明かない気がしたからだ。
「わたし明日も仕事だから帰るね?
傘持っててくれてありがとう。
君も傘ある?もう走っちゃだめだよ?」