齧りかけの林檎
第1章 ● 真っ赤な君 ♀side
わたしの傘の、彼が持っている少し上を持つ。
傘を持つ手が離れると、捕まれたほうの手もゆっくりと離された。
「じゃあね、気をつけてね」
男の子から離れようと歩き出すと、
また手が掴まれた。
またかよ。
「あ、あの!
タオル洗って返します!明日!」
明日?
明日また本を借りに図書館には来ようと思っていたけど、
別に高くもないタオルだ。
返してくれなくてもいいんだけどな。
大丈夫だよ返してくれなくても、と答えると
「明日!今日と同じくらいの時間に来ます!
よかったら来てください!
おれ、ずっと待ってます!」