齧りかけの林檎
第11章 ● 君とお鍋 ♀side
外はだいぶ、日が落ちていた。
「もしもし、歩くんどうしたの?」
メールの返信をしなかったから、
心配して電話をかけてきてくれたのかな?
「なんかうちの兄貴も大根持って帰ってきたんですよ。
なんかさわやかな兄ちゃんからもらったって言ってて」
「へー、もしかして同じ業者さんかなー?
うちに来るの遅かったから、
そのお兄さんの会社にも
行ったのかもしれないね」
どうやら、歩くんのお兄さんも
今日はお仕事だったらしく、
配送業者の運転手のお兄さんに
大根をもらったらしかった。
配送業者のトラックは
遅くても10時までには来ると思っていたのに、
あのお兄さんが来たのは、結局11時半すぎだったから
もしかしたら歩くんのお兄さんの会社で、
なにかトラブルがあったのかもしれない。
他にも荷物が積んであったから。
「偶然ですね。
ゆりさんは何本もらったんですか?」
「じゃあ歩くんち、もう大根いらないね。
誰かもらってくれないかなーって思ってたんだけど。
さすがに3本もあるから
一人じゃ食べ切れなくて」