齧りかけの林檎
第12章 ● 君とお鍋 ♂side
彼女はおれの方を向くと、
少し恥ずかしそうな顔をして
やわらかく笑った。
「それ何見てるの?」
持っている雑誌を、覗き込んだ。
「今日のごはん、
このお鍋にするか、
こっちのお鍋、どっちがいい?」
手に持つ雑誌には、
〝冬でもポカポカ〟と書いてある
大根をたくさん使ったみぞれ鍋、
彼女の前の平積みの本の上には、
〝子供も喜ぶ簡単デコ鍋〟と書いてある
トマト味っぽいかんじで、
星型やハート型などに切られた野菜などが乗っている
お鍋のページが、開いて置いてあった。