齧りかけの林檎
第2章 ● 真っ赤な君 ♂side
ある日、気づいてしまった。
彼女が図書館の人を見ているのを。
図書館で働いてる人の多くは女の人だった。
何人かは男の人が居て
彼女は本を借りるときに
絶対に、ある男の人のところに並ぶ。
黒い髪を少しだけくしゅっとさせたかんじの
眼鏡をかけた大人っぽい男の人。
彼女はたぶん、
その人のことが好きだ。
好きとかいかないまでも
お気に入りであることはわかる。
それくらいにその図書館の人と話している時は
ほっぺたが落ちるんじゃないか、っていうくらいに
ぷっくりと頬を上げて、嬉しそうに笑っている。