齧りかけの林檎
第5章 ● 君の名前 ♀side
彼を見つけた瞬間に足がまた動いた。
ゆっくり歩いていたかと思うと、いつの間にか走っていた。
「ほんっとにごめんなさい!!!あのッ!!!ざっ、残業があって!!!
みんなでやってたからエレベーターもすっごい混んでて乗れなくて!!!
階段を下りてきたんだけど、わたしの足じゃエレベーター待ってたほうが早かったかも!!!
ほんとにこんな時間まで待たせてごめんなさい!!!」
ゼェゼェしすぎて、何を言っているかわからないかもしれない。
でも一生懸命、頭を下げて謝った。
こんな時間まで待たせてしまって、本当にごめんなさい。