齧りかけの林檎
第5章 ● 君の名前 ♀side
「あ、ご、ごめんね!
これ君のタオルなのに
使っちゃって」
「あ、いいよいいよ、
わたしのだし。
むしろありがとうございます」
彼の手からタオルを受け取る。
ものすごく冷たくなった手が、触れた。
こんなに冷たくなるまで待たせてしまって、本当にごめんなさい。
缶コーヒーでも買ってきたからよかったのか?
でもまさか待っているなんて思っていなかったし、コーヒーを買うなんて思いつきもしなかった。
・・・嘘、
本当は
待っていてくれたらいいなって
思ってた。