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祠の鬼

第6章 迷走、闇の中

案内された部屋はシンプルなものだった。



言うならば、必要最低限のものしかない。



本棚には難しそうな本がぎっしり並び、机にも本が数冊並びパソコンが置いてある。



後は寝るためのベッドがあるだけの、きちんと整理整頓された部屋。



響が机に向かいパソコンを開け、起動させる。



「すごいね、本がこんなにたくさんある……本、好きなの?」

「まあ。俺の両親が本が好きで、それで古書店始めたんだ。だから、やっぱり親の影響なんだろうな」

「そうなんだ。すてきなご両親だね」

「……もういないけど、ね」

「え……?それって……」



響はそれには答えず、慣れた手つきでキーボードを叩く。



両親が残したのは僅かな財産。



古書店は儲かる仕事ではなく、他の仕事と掛け持ちをしていた。



響からすれば、いつも不満を抱いていた。遊びに連れてってくれないと父親にぼやいたら――



「本はいろんな世界に連れていってくれるんだ。お前が望めば、どんな場所にだっていけるぞ。それこそ、世界の果て、にもな」



そう言って、楽しそうに笑った時のあの顔が、今でも忘れられない。



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