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祠の鬼

第7章 空白を埋めるもの

綺麗な顔立ちをした少年が、いつの間にか真後ろに立っていた。



闇を思わせる深淵の瞳。



「干渉はしない主義だけど、このままじゃ面白くないから、ひとつ教えてあげる」

「何を……?」

「鬼は確かに存在するんだよ。神出鬼没、っていうでしょ?信じなさ過ぎて何も視えない、視ようとしないのは愚者のする事だ――鬼は、いつでも、傍にいる」



風もないのに、紫黒の髪が揺れる。



ありさが何も言えないでいると、少年がニコリと微笑む。



「どうやら時間切れみたいだ――じゃあまたね、オヒメサマ」



次の瞬間、何事もなかったように正常さを取り戻し、恐怖も嘘のように消えた。






まるで、最初から何もなかったように。






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