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祠の鬼

第1章 鬼の噂

「どうしてわざわざ俺の名を出した?隣のクラスで、しかも初対面の人間の奴の名を出す理由、がわからないんだが」

「そう?ただ永津間の家が古書店だと噂、で聞いて興味持っただけなんだけど――それじゃ理由にならない?」

「……なるわけないだろ」



そんな事を言っていると、読書スペースの部屋からありさが戻ってきた。



本を大事そうに抱きしめて。



「雨野くん、本ありがとう……あ、沙夜ちゃんおかえり」

「ただいま〜ありさはほんと、本好きだよねぇ」



感心したように沙夜が呟き、ありさはちらっと響の方へ視線をやる。金髪で背が高い――いかにもモテそうな容姿なのに、性格は落ち着いていて常識人に見える。



そんなありさの視線に気づいた響が深理から視線を外し、ありさを見た。



「俺の顔に何かついてる?」

「!い、いえ……すみませんっ」



恥ずかしくなり慌てて頭を下げれば、本を落としてしまい拾おうとしゃがんだ時、誰かの手と重なる。



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