アイドル様の、ホントのお顔
第3章 ~REN~
「岳さ…」
「俺の言う通りにやれば大丈夫だから。」
なんか…このパターン、見覚えが…
「安心しなよ、遼馬君。 こいつ、うちのメンバーの中で一番センスいいから。」
「でもっ…」
嫌な予感しかしない。
「ほら、そこ立って!!」
「ちょっ…」
混乱している間に、セットに立たされ、逃げ場がない状況に。
「あ、あとこれ差して。」
「……目薬…ですか?」
「そう。」
写真を撮る直前、岳さんが手渡してきたのは目薬。
「結構多めに。」
「……は、はい…」
結局、写真を撮ることからは逃げられないのか…
「………差しました。」
「よし。」
こんなことして、一体何をするつもりなんだろうか。
「じゃ、そこ立って。 壁の方向いて。」
「あ、はい。」
とりあえず、さっさと終わらせるためにも指示に従っておこう…
「視線少し上で、 少し髪をかき上げてみて……そうそう。 いい感じ。 何回か瞬きしてみて。」
言われた通りにポーズをとると、カメラマンさんがシャッターを切る音がスタジオに響いた。
「それじゃ、視線だけこっちに向けてみてね~。」
「…………」
っていうか、今思ったけど…
瞬きするたびに目薬がこぼれるから、まるで泣いてるみたいな写真になるんじゃ…
「ん。 いいんじゃないかな。
倉田さん、どう?」
「うーん…」
撮った写真を見て、唸るカメラマンさん。
「すごいね~!! こんな綺麗な写真、久しぶりに撮ったよ。」
「パソコンの方に移して、見せてもらってもいいですか?」
「もちろん。」
「遼馬も来いよ。」
岳さんに手招きされ、一緒にカメラマンさんについて行く。