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秘密の兄妹

第9章 幸せを感じるとき




「紫織ちゃん、もしかして少し前にお風呂に入ってた?髪の毛と身体からいい匂いがする。」



武部さんはニコッと笑って聞いてくる。



「…昨日、少し用事があって…夜にお風呂に入れなかったのでさっき入ったんです……」



私が困惑した顔でそう言うと、武部さんの顔が曇る。



「昨日、彼氏と…してたの?」



「…………」



「答えないってことはそうなんだ……」



武部さんは私の手を握って聞いてくる。



「紫織ちゃんは、今その彼氏と付き合っていて幸せ?」



…付き合ってる……?



そんな贅沢な関係じゃない。私はただのオモチャだもん……



オモチャ…だから…



ずっとその言葉を今まで自分に言い聞かせてきた。



だから、お兄ちゃんに大切にされなくても仕方ないって……



お兄ちゃんが普通に側にいてくれれば、それ以上何も望まないって…そう思おうとした……



でも、もう限界だよ……



「…うっ…ふっ…ひっく…」



私は武部さんの前で、涙をボロボロと流した。



「どうして私にそんなこと…聞くんですか…?」



とめどなく溢れてくる涙を拭いながら武部さんに聞く。



「紫織ちゃんのことが好きだから…」



「……っ…」



武部さんは私の手を握る手に力を込める。



「この頃、紫織ちゃん、よく悲しい顔をしていることが多いから心配してたんだ…」



「俺は紫織ちゃんのこと好きだよ。大切にしたい……」



そう言うと、武部さんは私のことをぎゅっと優しく抱きしめる。






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