秘密の兄妹
第9章 幸せを感じるとき
ピルルルルッ…
突然、武部さんの携帯の着信音が鳴る。
武部さんは携帯を見ると、私の身体を片手で抱きしめながら電話に出る。
「もしもし、ああ、悠人?…何?大地そんなに暴れてんの?」
お、お兄ちゃん…!?
武部さんは優しく笑って、私の頭をなでなでする。
「分かった…今から行くよ、でももう夜遅いから少し遅れる……じゃあ。」
武部さんは電話を切ると、不安そうにしている私の顔を両手で覆う。
「…好きだ……好きだよ…紫織ちゃん。安心して、このことは悠人には黙っておくから…」
私は頷いた。
「…行ってきて…お兄ちゃんの所に……私はもう平気だから。」
「うん…いい返事待ってる……」
武部さんはそう言い私の頬にキスをすると服に袖を通して、お兄ちゃんいる友達のマンションに向かっていった。
私はひとりベットの中で、武部さんの残ったぬくもりに包まれていた。
男の人に抱かれて初めて幸せを感じた……
武部さん、私のこと一人の女の子として扱ってくれた
私のこと好きだって言ってくれた
「愛してる」とも言ってくれた……
お兄ちゃんがしてくれない私の身体の心配をしながら、お兄ちゃんが絶対に言ってくれない言葉を言いながら…私のことを抱いてくれた。
あの人と一緒なら幸せになれるのかもしれない……
お兄ちゃんを失っても、武部さんなら私の側にずっといてくれるかもしれない……