秘密の兄妹
第11章 心の変化
―お昼過ぎ―
入学式だから今日は早く帰れる。
「なあ、悠人!今日、大地の家に行くんだけどお前も行くよな?」
「ああ…」
「高瀬!!」
俺が風磨に返事をしていると、クラスの奴に呼ばれる。
「お前の妹が来てるぞ!紫織ちゃん!!」
俺が廊下の方を見ると、紫織が教室の入り口で恥ずかしそうにしながら立っていた。
そんな紫織にクラス中の男子が釘付けだ。
俺は急いで紫織の側に行く。
「どうした?何で俺のクラスの教室まで来てんだよ。何かあったか?」
紫織はもじもじしながら俺に言う。
「あのね、今日スーパーのお米の特売日なの。荷物が重くなるからお兄ちゃんにつきあってもらいたくて……。今日は一緒に帰ってくれない?」
一緒に……?
「…分かった。カバン持ってくるからここで待ってろ。」
「うん!」
俺は嬉しそうに笑う紫織を見つめると、カバンを取りに自分の机に向かった。
「なんだって、紫織ちゃん…」
大地が俺に聞いてくる。
「ちょっとな。悪いけど今日は紫織と帰るわ。」
俺はそう言うとカバンを持って再び紫織のもとへ向かった。
「お兄ちゃん、迷惑じゃなかった?急に教室まで来ちゃってごめんね。」
申し訳なさそうに俺の顔を伺う紫織。
「…帰るぞ」
俺は紫織の手を引いて教室を後にした。
早く紫織を独り占めしたかった。