秘密の兄妹
第11章 心の変化
「あっ、悪い春樹。間違えて紫織の携帯のアドレス削除した」
俺はそう言って携帯を春樹に返す。
「え?間違えたって……」
俺は春樹を鋭い目で睨みつける。
「悪いけどもう、紫織とは関わらないでくれ。これからは俺が兄貴としてあいつのこと気にかけるようにするから、あいつには近づくな。」
俺はそう言うと、自分の教室に向かって歩き出した。
俺は周りの奴らに、女に関してはドライだと言われているが、正直、本命の女にはかなり焼きもちやきだと思う。
紫織の携帯に、俺と父さん以外の男のアドレスが入っているだけでこんなに嫌だなんてかなり重症だ。
教室に向かって歩く俺のことを、風磨が黙ってじっと見てくる。
「何?」
「…いや、お前ってたまに分かんなくなる。前は紫織ちゃんに冷たい兄貴だと思ってたけど、時々、実は紫織ちゃんのことすげえ大切にしてるんじゃないかと思うときがある…」
「そう?俺は紫織に対して酷い兄貴だと思うけど……」
実の妹の紫織とセックスしてるって知ったら、風磨だってそう思うに決まってる……
「…………」
風磨はそれ以上何も言わなかった。
★★★★★
帰りのホームルームが終わると、俺は紫織の教室に向かった。
何とかく今日は一緒に帰ってやりたかった。
階段を上がって行くと、途中で紫織と同じ一年の女子が固まって騒いでいた。
「今日のミレニアムのライブ楽しみだね!!これからさっさと家に帰って着替えて駅前に集合ね!!」
「うん!!」
キャーキャーうるせえ……
でも、ミレニアムのライブのチケットとれるのってすげえな…
あのバンドのチケット、なかなか取れないって有名だからな。
そう思いながら紫織のクラスの前まで行くと、紫織が廊下で国語の原田先生と何か話していた。
「高瀬さん、国語の漢字の小テストの採点、国語係の村上さんにするように言っておいてくれない?これ、解答ね。一人じゃ大変だから、できたら高瀬さんも手伝ってあげて。先生、忙しいからよろしくね。」
「はい」