秘密の兄妹
第12章 募っていく想い
「神保さん、橘さん、早く食券買わないと後ろが混んじゃいますよ。」
「あ、ああ…」
「そうだな…」
「…………」
…正直…俺以外の男に、その可愛い笑顔見せないでほしい……
大地と風磨が食券を買ったあと、俺も食券の発券機のボタンを押して、食券を買った。
お盆の上に食券を乗せて食堂の列に並ぶと、誰かがくいっと俺の制服の上着の裾を引っ張った。
後ろを振り向くと紫織がいた。
紫織は俺のお盆に乗せてあるうどんの食券と自分のカツ丼の食券を交換した。
「…お兄ちゃん、さっき私と会ったから私に気をつかって食べるメニュー変えたでしょう?」
「…どうして…分かった…?」
「私がお兄ちゃんに声をかける前に、カツ丼のボタンのところを見てたからそうなんじゃないかと思ったの…」
紫織はにこっと笑う。
「お兄ちゃんはまだ高校生で育ち盛りなんだから、お昼くらい健康のことは気にせず好きなもの食べていいんだよ。」
「その分、私が朝ごはんと晩ごはん、バランスよく作るから…。そのために私がいるんだよ?」
「…………」
「私は初めからお蕎麦かうどんにするつもりだったから交換…ね?」
紫織は、ん?と俺に確認するように首を横にする。
「…じゃあ、そうさせてもらう……」
俺はお盆にカツ丼の食券を乗せたまま列に並んだ。
大地と風磨は俺と紫織のやり取りを、何も言わずに黙って見ていた。