秘密の兄妹
第17章 春樹と風磨
「…………」
「俺のクラスの空手やってる谷垣って奴、知ってるか?
中学の部・高校の部で、6年間一度の負けなしの空手日本チャンピオン」
「…………」
「その谷垣が空手で一度も勝てたことのない奴がいるって、本人が言ってた。
そいつは、どの大会にも選手登録してなくて、空手部にも入っていない。
谷垣が通っている空手道場に、週一回くらい顔出して、一人で稽古して帰っていくって……。
谷垣が試合を頼むと、子供を相手してるかのように、あっという間にやられるって本人がボヤいてた。
そいつの名前が
橘道場の師範の孫
【橘 風磨】
お前だよ。」
「…………」
「6年連続の空手チャンピオンを子供相手にするって、お前、どんだけ強いんだよ?
何でそんなに強いのに、大会に出ねえの!?
優勝とかしたら、すげえモテんじゃん!!
現に、谷垣かなりモテてるし!」
「…………」
俺からしたら、春樹は救いようのない馬鹿だとしか思えない…
「…春樹、さっきから何か俺に違和感あるのに気づかないか?」
「お前に違和感?」
「……缶コーヒーの缶、左手で持ってるだろ?
俺、右利きなのに…」
「…………」