
秘密の兄妹
第4章 兄の想い
すると、お兄ちゃんは私のことを後ろから抱きしめてくれた。
…こういうの、一度してみたかった……
恋人同士みたいで嬉しい。
私は抱きしめてくれているお兄ちゃんの腕に手を添えて、お兄ちゃんの右肩の部分に顔をすりすりとすりよせた。
「…………」
「えへへ、もし彼氏ができたらこういうのしてみたかったの。」
「…彼氏と?」
「うん。彼氏とこういうことしてみたかった…」
「お前、彼氏ができたら、今みたいに顔をすりよせて甘えたりすんの?」
私にそう聞いてくるお兄ちゃんの声はひどく冷たくて、身体が思わず固まってしまう。
え…何かお兄ちゃん怒ってる……。私、変なこと言った?
「…まあいい。紫織、携帯貸せ。」
「…うん」
私はお兄ちゃんに携帯を渡した。
お兄ちゃんは片手で私を抱きしめたまま、もう片手で私の携帯をいじる。
「男のアドレスは春樹のだけみたいだな……」
「明日の約束、なんて断ればいい?」
私は不安げにお兄ちゃんに尋ねる。
「他校に彼氏ができたから行けないって断れ。」
「え!?私、彼氏いないのにそんな嘘つけないよ。昨日の今日で彼氏ができるなんて無理があるし!」
私はお兄ちゃんの方を向いて、お兄ちゃんを見上げる。
「そのくらい言わないと春樹はお前のことあきらめない。お前が嘘が下手なのは知ってるから、そこは俺がフォローする。」
お兄ちゃんは私に携帯を渡す。
