秘密の兄妹
第6章 知らない本音
学食を食べ終えて、教室へ戻ろうと廊下を歩いていると、階段の踊り場から他のクラスの奴らの声が聞こえてきた。
「紫織ちゃん、他校に彼氏いんだろ?本当にその手紙渡すのか?」
「ああ、答えは分かってるけど…お前らも分かるだろ?俺の気持ち!」
「分かる!!分かる!!俺も貰いたいもん!」
…貰う?……何を?
俺は廊下から階段の踊り場へ行き、そいつらに話しかける。
「紫織って俺の妹のこと?紫織に手紙渡すなら俺が渡しておくけど?」
即、ゴミ箱行きだけどな…
そこにいた奴らは顔を見合わせると、気まずそうに答える。
「いや、いい。自分の手で渡したいから。じゃ!」
そいつらはみんなバタバタと走って、隣の教室に走っていった。
そこに、後ろから春樹が現れる。
「やっぱりあいつらもあの噂聞いたんだな。」
あの噂?
「おう、春樹、お前飯食わないでどこ行ってたんだ?」
風磨が春樹に聞く。
春樹は大量のアンケート用紙を持っていた。
「広報委員の仕事してた。」
「お前、真面目だな。ところで春樹、さっき言ってたあの噂って何?」
都合よく、俺が聞く前に風磨が聞いてくれた。
「紫織ちゃんに手紙を自分で渡すと、そいつにはちゃんと紫織ちゃんから丁寧な字で断りと感謝の手紙が返ってくるんだよ。」
「みんな断れるの分かってるけど、その紫織ちゃんの書いた手紙が欲しくて自分で手紙渡してるんだ。」
「人伝いに渡された手紙の返事は絶対に返さないけど、手渡しは【勇気を出して渡してくれた人への誠意】として返事だけでもきちんとしたいって、一人一人に丁寧に違う内容で返事を書いてる。」
春樹は俺より兄貴づらな顔をして紫織の話をする。
「へえ!紫織ちゃんって誠実な子なんだな…なあ、悠人!」
「ああ…」