秘密の兄妹
第8章 天使と悪魔
……どうしよう、なかなか小雨になってくれない……
橘さんには折り畳みの傘があるだなんて嘘ついちゃったけど、走って帰れば、たぶん私の家のほうが近いから渡しちゃった。
……うん、仕方がないから濡れて帰ろう……
私は雨の中、走って帰った。
――――――
――――
――
「ただいま…」
家の鍵をあけてリビングに行くと、お兄ちゃんがソファーに座ってテレビを見ていた。
「何?紫織ずぶ濡れじゃん。傘持っていったはずなのに何でそんなに濡れてんの?」
お兄ちゃんは私の姿を見て驚く。
「えっと…委員会の仕事に時間かかっちゃって、急いで帰りたくて学校に傘忘れてきちゃった。」
「……お前ってそんなにドジな女だったっけ…?」
「まあ、たまに?」
私はお兄ちゃんに笑いかける。
「…早く着替えてこいよ、風邪引くだろ。」
「うん。…お兄ちゃん、私が風邪引いたら心配?」
「…馬鹿。セックスの相手できなくなるから心配してんだよ。」
……分かってるよ…聞いてみただけ……
「そうだよね…。着替えたらごはん作るね。」
私は階段を上がって、2階の自分の部屋に向かう。
お兄ちゃんが私に向ける熱い視線になんか、全く気づかなかった。
「……本当に馬鹿……心配するよ…。」