
秘密の兄妹
第8章 天使と悪魔
「あと、中庭の花壇の世話もしてる。草むしりとか水やりとか…
この前『何で紫織ちゃんがそんなことしてんの?』って聞いたら、
『前まで世話をしてた校務員のおじさんが体壊して入院してるから、その間にせっかく植えた花を枯らしたらかわいそうだから』
って笑って答えてた。
「…へぇ…」
お人好しにも程があんだろ。
「他にも…」
まだあんのかよ!?
「中・高って委員会も一緒じゃん。
この前、大地が生活委員会の集まりで紫織ちゃんの隣の席だったらしくて…
で、あいつ消しゴム忘れて、プリントに記入して間違えた文字をシャープペンで塗り潰してたら、
それに気づいた紫織ちゃんが、自分の消しゴムを半分に割って『どうぞ』って渡してくれたんだってさ。
大地、すげえ喜んでた。」
「…………」
「紫織ちゃんは自分がよく思われたいとか、そういう計算を全くしていない。
本当に純粋で優しい。
今時、そういう子いなくね?」
「俺も自分がいい人間とは言えねえけど、傷つけても大丈夫な子と傷つけちゃいけない子くらいは分かる。
紫織ちゃんは後者。」
