秘密の兄妹
第9章 幸せを感じるとき
ピンポーン
俺が大地のマンションのインターホンを鳴らすと、大地と一緒に風磨も出てくる。
大地はけっこう金持ちな家の息子で、高校からすでに一人暮らしをさせてもらっていて、大地のマンションはいつも俺たちの遊ぶときのたまり場になっていた。
「悠人、悪いな…。こいつすげえ落ち込んでて、さっきまでヤケになって馬鹿みたいに暴れてたんだ。」
「……春樹は来てねえの?」
「あいつは明日の塾の模試の勉強があるんだって……。大学はエスカレーター式のうちの大学じゃなくて、もっとレベルの高いとこ狙ってるらしいから…」
「ふうん。」
「うちでも私立の中では、十分レベル高いのにな。」
優等生だな…紫織とよく似てる……
紫織も大学受験はちゃんとしたいって言ってたからな。
「とにかくあがれよ。お菓子とジュースならいっぱいあるから!あと、つまみも!!」
「はいよ。」
俺は風磨に促され、落ち込んでいる大地の部屋にあがりこんだ。
俺が部屋に入るとすぐに宴会が始まる。
大地は沈んだ顔をして俺に言う。
「…悠人、お前はいいよなぁ。振ったことはあっても振られたことはねえだろ……」
「女泣かすことはあっても女に泣かされることはない。羨ましいよ……」
「まあな…」
俺は適当に受け流す。
「……なあ、紫織ちゃん俺にちょうだい……」
「は?」
大地の突然の申し出に驚いて顔を上げる。
「だって紫織ちゃん、優しくて本当にいい子だもん…。兄貴のお前が進めてくれれば、今の彼氏と別れて俺と付き合ってくれるかもしれねえじゃん。」
「紫織ちゃんなら俺のこと大事にして尽くしてくれそう……」
……紫織はお前に尽くすためにいるんじゃねえよ。