あなたへ
第1章 あなたへ
「遅い!!」
「しゃあないやんけ。ドラマ長引いてんから。」
確か秋も終わりの近づいた肌寒い日だった。
「なんでお前ばっかりドラマ出てんねん。」
「そら、俺の演技力がええから…」
「あんまドラマ出んなよ。」
「なんでそうなんねん。」
「……だって…。」
今より少し空いた俺らの間にいちょうの黄色い葉が落ちていった。
うどん屋までの長い距離は夏場の緑の中では缶蹴りしたりベイゴマしたりして走り回ってバカになれるが、秋になり、黄色く落ち着くととたんに心を冷やしていく。
「……なぁ、よこ。」
「…ん?」
急に立ち止まったひなは落ちたいちょうの葉を1枚拾って小さく呟いた。
「……俺…よこのこと…好きになったらあかんかな?」
今にも消えそうなひなを俺ははじめて見た。
「……どういうこと?」
「…いや、なんもない。」
手のひらのいちょうがそっと道に落ちる。
ひなはその葉を置きざりに足早に歩きだした。
俺より少し小さな背中を俺はただ何も言わずに追いかけた。
うどん屋のなかでも、ひなは一言も口を聞いてくれなかった。
「俺…そろそろ東京行かなあかんから…。」
俺が改札の前に来てもうつむいたままのひながあまりに凍えて見えた。
人のいない小さな駅。
俺はひなのほほにそっと唇を当てた。
ようやく上げた顔は大きな目いっぱいに光を溜め込んでいた。
「…ええよ、俺のこと好きになって。そのかわり、俺もお前のこと好きになるから。」
小さく震えるひなを暖める笑顔を俺は駅に残し、電車に乗った。
「しゃあないやんけ。ドラマ長引いてんから。」
確か秋も終わりの近づいた肌寒い日だった。
「なんでお前ばっかりドラマ出てんねん。」
「そら、俺の演技力がええから…」
「あんまドラマ出んなよ。」
「なんでそうなんねん。」
「……だって…。」
今より少し空いた俺らの間にいちょうの黄色い葉が落ちていった。
うどん屋までの長い距離は夏場の緑の中では缶蹴りしたりベイゴマしたりして走り回ってバカになれるが、秋になり、黄色く落ち着くととたんに心を冷やしていく。
「……なぁ、よこ。」
「…ん?」
急に立ち止まったひなは落ちたいちょうの葉を1枚拾って小さく呟いた。
「……俺…よこのこと…好きになったらあかんかな?」
今にも消えそうなひなを俺ははじめて見た。
「……どういうこと?」
「…いや、なんもない。」
手のひらのいちょうがそっと道に落ちる。
ひなはその葉を置きざりに足早に歩きだした。
俺より少し小さな背中を俺はただ何も言わずに追いかけた。
うどん屋のなかでも、ひなは一言も口を聞いてくれなかった。
「俺…そろそろ東京行かなあかんから…。」
俺が改札の前に来てもうつむいたままのひながあまりに凍えて見えた。
人のいない小さな駅。
俺はひなのほほにそっと唇を当てた。
ようやく上げた顔は大きな目いっぱいに光を溜め込んでいた。
「…ええよ、俺のこと好きになって。そのかわり、俺もお前のこと好きになるから。」
小さく震えるひなを暖める笑顔を俺は駅に残し、電車に乗った。