雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
一二三はそれが何か知らないが、本能で感じ取る。それは楽しい祭りの空気とは合わない、固く真面目な本であると。
「あー、やっぱり私、団さんのお手伝いを……」
「論語か……懐かしい。景泰様にいただいて以来、擦り切れるまで読んだものだ」
一二三は逃げようとするが、遠い目で思い出話に入った嘉明を前にすると、機を失い口を閉じるしかなくなる。
「子曰はく、学んで時に之を習ふ。亦説ばしからずや……」
結局一二三は団右衛門が料理を持って来るまで、正座しながら論語を聞く羽目になった。
「よーし、皆飯だ! って、なんだよ一二三。何もしてないくせに、やけに疲れた顔してるな」
「ああ……団さん、あなただけが私のきぼ、うっ!?」
料理でようやく心躍る祭りが始まると思いきや、団右衛門が持つ鍋の中身は何故か黒い。一二三が驚愕していると、団右衛門は舌を出し可愛らしい顔を作って誤魔化した。
「だってオレ、料理上手くないし!」
「自信まんまんで包丁握ったのはどこの誰ですか! 私のときめきを返してください!」
「大丈夫大丈夫、味見はしてる、食えないほどまずくはないから」