雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
「そうすれば、明さん。ナタラという祭りは、お芝居を見たり本を朗読するらしいのです。今日は隠れてナタラなのでお芝居は諦めましたが、朗読なら大丈夫ですよね」
「好きにすればいい。お前は妖魔なのだ、人の法に従う必要はないのだからな」
「ええ、でも団さんに聞いたら、家には朗読出来る本なんてないって言うんです」
「……朗読出来ない本ならあるのか?」
「さあ?」
口に出す事をはばかられる本とは何かと、嘉明は首を傾げる。一二三もよくは分かっていないようで、同じように首を傾げた。
「という訳で、明さん。代わりに明さんの知っているお話を聞かせてください。明さんなら博識ですから、本がなくてもお話を沢山知ってますよね!?」
迫る一二三の瞳は、青年であっても童と変わらず澄んでいる。その瞳に見つめられると、嘉明はつい頭の中で、何か話せる物語を知っているだろうかと探してしまった。
「――そうだ、物語ではないが、私が何度も読み返した本なら」
「じゃあ、それを聞かせてください! なんという本なのですか?」
「論語だ」
「ろん、ご?」