雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
「そういう問題じゃないんです、楽しくなければ嫌なんですー!」
一二三はその場にうずくまり、しくしくと泣き声をあげる。わざとらしい泣き真似だが、声ばかりは大きいせいで、釣られた雪ん子も泣き出してしまった。
「ふぇ……うわあぁん!」
雪ん子まで巻き込むつもりはなかった一二三は、慌てて泣き真似を止めると雪ん子を撫でる。
「す、すみません! 私、泣かせるつもりでは……」
しかし泣き止まない雪ん子に、一二三はますます慌てふためく。その場は一気に惨状と化すが、不意に嘉明が笑い出した事によって空気が変わった。
「ふふ……ははは、ナタラとは、とんだ祭りだな」
珍しく声を出して笑う嘉明に、一二三と団右衛門はぽかんと口を開け言葉を失う。それでも嘉明は、堪えきれず涙を浮かべながら笑った。
「私は雪ん子に取り憑かれ、朗読する本もなく、料理は真っ黒。こんな人間に祝われても、異教の神は苦い顔をするだろうな。いや、散々だ」
「よ……嘉明? もしかして怒りすぎて、逆に笑った感じか」
団右衛門が恐る恐る訊ねると、嘉明は首を振る。