雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
「違う。こんな連中でも、そばにいると楽しいのだ。異教の神を祀るつもりはないが、今皆がここにいる事に感謝したくてな」
いつの間にか雪ん子も、嘉明に釣られて笑顔を取り戻している。団右衛門も一二三も、自然と笑みをこぼしていた。
するとその時、玄関の戸が開いた音が響く。そして家主に断りもなく、白装束の女が乗り込んできた。
「これは……雪女」
「ああ、よかった。楽しい時を過ごしていたのね、わたくしの可愛い雪ん子」
雪女は他に目もくれず雪ん子の元に駆け寄ると、嘉明から強引に雪ん子を奪い取り抱き締める。団右衛門はそんな雪女に、臆せず声を掛けた。
「淡路に雪女とは、珍しいな。どうだ、あんたもナタラに参加していかないか?」
雪女はそこで初めて、団右衛門達に目を向ける。人間に退魔師、妖魔という不思議な取り合わせに目を丸くするが、団右衛門が持つ鍋の中身を見ると氷の瞳に変わった。
「遠慮します。わたくしの雪ん子が毒されてしまいますわ」
団右衛門に背を向けると、今度は氷ではなく母親らしい温かな目を浮かべ、嘉明にお辞儀した。