雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
「団。ナタラでは、食べ物を配るとも言っていたな」
「ん? ああ。宣教師がさ、信者にも信者じゃない奴にも分け隔てなく、食うのに困ってる人間に施してやるんだって聞いたぞ」
「なるほど、それは素晴らしい行動だ。命の重みを理解し、差別なく伝える――ならばこの金も、ナタラに則り分け与えられるべきだな」
「え!? じゃあ鮑は!?」
「お前が地道に働いて手に入れる事だな。ほら団、鍋を置け。ナタラは、まだ始まったばかりだろう?」
嘉明の言葉と笑みは、黄金よりも団右衛門の心を惹きつけ動かす。もったいないと思う気持ちはすぐにかき消され、団右衛門は大きく頷いた。
「ああ! 今日は夜まで、飲み明かそうぜ!」
鍋は苦い上に、雪女の吹雪で冷めていたが、そんな事故さえも笑顔の元となる。夜が耽るまで、笑いの絶えない祭りは続いていた。
子どもの姿に戻ってはしゃいだ一二三は、三人揃って眠りにつく。嘉明は三人を隣の部屋に運びかいまきをかけてやると、起こさないよう静かに居間へ戻った。
「そろそろお開きだな。ここまで遅くなると伝えてはいなかったから、城の皆も心配しているだろう。私は城に戻るぞ」