
雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
時は年末、師走である。淡路は志智の城主である嘉明は、山ほど仕事を抱えていた。小姓を呼びつけ着替えると、冷える空気に身を縮めながら部屋を出て廊下を進む。そして中庭の近くを通りがかったところで、空から降る雪の存在に気が付いた。
「雪……」
嘉明は急ぐ足を止め、日が昇ってもなお白いままの空を見上げる。手を伸ばせば、ふわりと手のひらに舞い降りる小さな結晶。ぼんやりと空を眺めていると、着物の裾、足元の辺りを引っ張られた。
「ん?」
嘉明が足元に目を向けると、そこには見覚えがない、白装束の幼い男の子が一人立っていた。
「……これは」
白装束という出で立ちも不審であるが、子どもの髪の色が白髪というのも不審である。人とは違う銀色の瞳に、嘉明はすぐ状況を理解した。
「抱っこ!」
白装束の子どもは手を伸ばし、嘉明に抱っこをせがむ。嘉明は深く考えず望み通り子どもを抱き上げると、先程出て行った団右衛門の顔を思い浮かべた。
「童よ、何故に志智へ降りたかは分からぬが、私はお前のような者に詳しい者をよく知っている。今連れて行ってやるから、心配する必要はないぞ」
