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雪女がサンタクロース

第1章 雪女がサンタクロース

 
 抱き上げた子どもの体温が氷のように冷たいのを感じて、嘉明は確信する。この子どもは、妖魔の類である。しかし嘉明は怯える事も警戒する事もなく、平然と歩みを進めた。







 嘉明が団右衛門の家に足を運ぶと、団右衛門より先に一二三が飛び出してきた。

「あきちゃんも来たの!」

「いっしょに遊ぶの!」

「ね!?」

 勢いよく飛びついてくる三人だが、嘉明が抱いた子どもの存在に気付くと、驚いて家の中へ逃げ込む。そして柱の影から顔だけ出すと、じとりと子どもを睨んだ。

「雪ん子だ」

「寒いのきらい」

「ね」

「雪ん子? そうか、これは雪の妖魔か」

 道中も絶えず雪が降っていたのも、この子どもの影響かもしれない。嘉明がそう思案していると、団右衛門が包丁を片手に奥から現れた。

「嘉明、わざわざこんなところに何を――」

「包丁!」

「こわい!」

「ね!」

 だが団右衛門が話を聞こうにも、一二三が騒ぎ出しかき消されてしまう。団右衛門は舌打ちすると、一二三に札を投げつけた。

「静かに出来ないなら、大きくなって待ってなさい!」
 

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