雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
「やっぱり。じゃあ明さん、この子下ろしちゃ駄目ですよ。雪女が迎えに来るまでに下ろしちゃうと、怒った雪女に殺されますから」
「な、なんだと?」
「雪ん子自体は無害なんですけど、それがあるから厄介なんですよね。しかも抱き上げた人間の愛情を計るが如く、重くなっていきますから気を付けてくださいね!」
一二三は足元の小石を注意する程度の軽い口調だが、笑って済ませる危険ではない。幸い南蛮風の椅子に座っているため、雪ん子を膝の上に乗せて楽は出来る。しかし、いつ現れるか分からない雪女をこのまま待つのは、あまりに過酷である。
「……厠に行きたくなったら?」
「その時は私がお手伝いしてあげますから、抱いたまましちゃいましょうね」
「いや、気持ちだけで遠慮しておく。そのような真似は武士の恥だ」
「おっと、大事なところを見ていいのは、団さんだけなのですね。これは野暮な申し出失礼しました」
「そういう意味ではない! ああ、全く……迂闊だった」
嘉明が肩を落とすと、無垢な瞳の雪ん子と目が合う。腕の中で微笑む無邪気な子どもの姿は、嘉明の気落ちした心を慰めた。