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言葉で聞かせて

第7章 過去

千秋さんは敦史の質問に一瞬目を見開いて、そしてすぐに顔を俯かせてしまった

表情も、顔色も見れない


「千秋?」
「千秋さん?」


やはり、聞いてはいけなかったんだろうか


僕の心が罪悪感から痛む

すると、千秋さんはまたメモ帳を手に取った
そして次に見せられた時そこには


『あなた達のことが、好きだからです』


と書いてあった

僕と、それから多分敦史も思考が止まった



好き


千秋さんが僕達のことを、好き



抱いてはいけない期待感が僕達を包む


「そ、そんな、義兄弟への好意だけで克服出来るようなトラウマじゃねぇだろ……」


敦史も嬉しいはずだけどそれを堪えて、羞恥心からか顔を真っ赤にしている

でも千秋さんはわざわざ遠回しの確認として問われた敦史の質問に夢なんじゃないかってくらい僕達の希望通りの答えを返した


『恋愛対象として、あなた達が好きなんです』


そして下の方に小さく


『気持ち悪いですね。ごめんなさい』


と謝罪の言葉がある

それを読んだ僕達の感想はほとんど同じで


「うそ……」
「嘘だろ……」


と呟いただけ

千秋さんは僕達の言葉を悪い方に捕らえたのか申し訳なさそうに俯いて小さくなってしまった

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