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言葉で聞かせて

第2章 体調不良と猫

ベッド脇の床に座って、読みかけの小説を持ってきて読んでいると布団が僅かに動く音


起きたかな?


振り返って見てみたけど、目は覚めていなかった


あ、寝苦しいのか


再び汗を浮かべている千秋さんの顔をタオルで拭って、氷枕も変える

そしてまた読書を再開


そんなことを繰り返して、暫く経った頃
また布団がずれたかと思ったら今度は千秋さんの瞳がしっかり開いていた

僕は努めて穏やかに微笑む


「おはようございます。気分はいかがですか?」
「………」


千秋さんは心底驚いた顔をしたまま固まっている

それでも返答を待っていると、千秋さんはごそごそと動き出してベッドヘッド付近にあったメモとペンを取り出した

そしてそこに


『僕、また倒れてましたか?』


と可愛らしい綺麗な字で書いた


「えぇ。栄養失調と風邪が原因みたいです」
『悠史さんはお仕事は?』


何と呼んだらいいのかわからなかったのか、僕の名前のあたりで一瞬迷ったような間があったことに優しさを感じて微笑みを深めた


「お休みをいただきました。姉さんから千秋さんと連絡が取れなくなったと伺ったので」


僕の言葉に千秋さんは申し訳なさそうに頭を垂れる

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