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言葉で聞かせて

第2章 体調不良と猫

「出来ましたよ」


と声をかけると、千秋さんは弾かれたようにこちらを見た

ベッドに近づいてお盆ごとお粥の入った器を渡す


「自分で食べられますか?」


僕の問いに頷きで返した千秋さんはレンゲですくったお粥を冷ましながら上手に食べ始めた

暫くその様子を見ていると、悪かった顔色も回復して頬が薄紅色を帯びる


この感じなら長引かずにすぐ治りそう
良かった


するとある程度お粥を食べた千秋さんが手を止めて僕の方を見た


「もういいですか?」


こくん、と頷いた千秋さんが差し出したお盆にはまたあの綺麗な字で『ありがとうございました』と書かれた紙が乗っていた


最近はメールばかりで自分で字を書くことも手書きの字を読むこともなかったから、なんだか心が温かくなるな


なんて呑気なことを考えて


「僕たちは千秋さんより年下なんですから、そんなに改まって話さなくても大丈夫ですよ。それから呼び方も、呼び捨てで構いません」


僕の言葉に千秋さんは少し考えてからまた紙に何か書き始めた

普通に話す言葉と書く言葉とでは随分会話のテンポが悪い
けれど久しぶりに流れるゆっくりとした時間に僕は心が休まる気持ちになった

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