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言葉で聞かせて

第2章 体調不良と猫

「熱は下がったと言っても病人なんですから、何か食べたいものがあるなら僕が作りますよ?」


すると千秋さんは首を横に振った


「?」


あ……そうか
僕にご飯を作ってくれているのか
千秋さんはさっきお粥を食べたしそこまでお腹に入るわけない


人の好意を投げやりに扱うなんてことはもちろん出来るはずもなく、僕は微笑んだ


「ーーありがとうございます。座って待っていますね」
「!」


自分の言わんとしたことが相手に伝わったのが不思議なのか千秋さんはまた驚いた顔をした


「でも、無理はダメです。作り終わったらちゃんと横になって下さいね」


頷いた千秋さんは照れ臭そうに笑っている


あぁ、笑顔も可愛らしい
なんて


僕は繰り返し感じる感情を誤魔化すようにキッチンを後にした



基本は人に尽くす職業で、人に何かしてもらうなんて久しぶりだからか待っているだけというのはなんとも手持ち無沙汰だ

とりあえず読みかけの小説に手を伸ばしてパラパラとページをめくる
けれど内容が頭に入ってこなかったため断念

敦史がリビングに置きっ放しのファッション雑誌もめくってみる
小説と違って写真などで視覚からの情報が入ってくるけれど、やっぱり中身は頭に入ってこない

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