
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
その日の仕事も、さらにそれに続く日の仕事も流と内藤は俺たちの期待通りしっかりと仕事をこなした
もともと頭のいい奴なんだろう
流は内藤に勝るとも劣らない勢いで仕事を学び、指名してくれる客の数を順調に伸ばしていった
系統的に好き嫌いの分かれるところではあると思うがしかし
「楓くん!今日も来ちゃったっ」
「わぁ、マリちゃん!嬉しい!」
「今日もかわいいよぉ」
「マリちゃんも!メイク変えた?」
「わかる!?そうなの〜」
上手くやってるらしい
喜ばしいことだ
「流星?何飲みたい?」
「あ?んー……今日は気分いいから何でもいいぜ?」
「え、甘いのも?甘いお酒苦手じゃん」
「いいよ。今日だけな」
やったぁ、と喜ぶ客の頭を撫でながら今度は明日のことを考える
やっと明日が休みか
千秋との約束守ってやらねぇとな
前日に予約した店のことを考え、それに続くその日の行動も考えていく
「デートプラン」なんて似合わない単語に吐き気がするが、本当に今日は機嫌が良いらしくそれもいいかと思える自分がいた
「ねぇ?これいい?」
「いいじゃん。それ昔から好きだったよな」
「覚えてくれてたの?」
「当然だろ」
早く明日になんねぇかな
