
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
「ーー…さ、ーーーさん……ーーしさん、悠史さん!!」
「……っ」
弾かれたように目を開いた僕の視界に最初に入ったのは心底心配そうな顔をした千秋さん
「あ……っ」
抱きしめていた腕に大分力が籠っていて千秋さんに謝りながら腕を緩める
「そんなことどうでもいい」と言いたげな千秋さんは昨日の夜余分に持ってきて使わなかったタオルで僕の額を拭った
「ぇ……あ、汗……か……」
「魘されてましたよ。大丈夫ですか?」
額を拭ったタオルはそのまま僕の目元に移る
涙まで……
情けない
一体どんな夢を見たって言うんだ
僕の脳裏に以前千秋さんの夢を見た時のことがよぎった
また何か悪いことが起きる予兆、とかじゃないといいけど
「大丈夫ですか?」とまだ心配して泣きそうになっている千秋さんの頭をゆっくり撫でて落ち着かせた
「すみません。もうどんな夢かも覚えてないので大丈夫です」
「お水、持ってきますね」
一瞬安心したような表情を見せた千秋さんはスリッパの音を立てながらキッチンに向かっていった
ふと時計を見るとまだ日も上ってわずかしか経っていないような時間だ
起こしてしまって申し訳なかったな
