
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
さっき千秋さんが置いて行ってくれたタオルでもう一度汗を拭く
タオルはもうびしょびしょで、どうしたんだと自分で不安になった
「お水……持ってきました……」
ペットボトルの水を千秋さんから受け取って飲む
口の中に水を含んでから自分は酷く喉が渇いていたことがわかった
「ありがとうございます」
また心配そうな顔に戻ってしまった千秋さんに僕は笑顔を見せ続ける
「昨日運動してしまったせいか、お腹が空いてしまったのですが千秋さんは?」
「え?……っと、あ……」
一瞬千秋さんの気が抜けた瞬間丁度よく可愛らしい音が聞こえた
顔を真っ赤にした千秋さんに軽く笑ってから「それじゃあ、朝食にしましょうか」と頭を撫でて立ち上がった
昨日脱いで散らばった服ではなく、新しい服を箪笥から出す
そういえば千秋さんはもう服着てるんだ
「千秋さん、いつの間に服を着られたんですか?」
思いついたまま尋ねると
「あ、えと……実は最初悠史さんの寝言で目が覚めたんです。その時に」
「寝言?」
「はい。それがだんだん苦しそうになっていって……」
それで僕を起こしてくれたのか
「ありがとうございました。起こして下さって」
