テキストサイズ

言葉で聞かせて

第9章 鳴き声、泣き声


ずっと笑顔でいたからか千秋さんは安心した様子で「いえ」と笑ってくれた


「お礼ついでに、今日の朝食は私が作りましょうか」


僕がそう言うと千秋さんは嬉しそうに笑った


「いいんですか?悠史さんの手料理、初めてですね」


そんな千秋さんに僕も嬉しくなって、お互いにこにこしたままリビングに向かった


僕が朝食の準備をしていると、玄関から扉の開く音がした

敦史が帰ってきたみたい


「おかえりなさい」
「おかえり」


部屋にジャケットを脱ぎ捨てた敦史がリビングに入ってきて僕らが挨拶すると、敦史からは「あぁ」といつも通りの返事が返ってくる

けれど違ったのは敦史のこれまでにないほど疲れ切った顔


「どうかしたの?そんな疲れた顔して」
「あーー……いや……」
「?」


言い淀む敦史に僕と千秋さんが二人で首を傾げていると、言ってもいいか、と敦史が話し始めた


「なんっか今日アフター行った客がよ、面倒くさいっつーかなんつーか……」
「面倒くさい?」
「あぁ。俺あんまりガツガツ来る女苦手なんだよなぁ」


ガツガツ来る、と言うのは多分恋愛面の話ではなく性行為中の話だろう


「くす、珍しいね。王様敦史が攻められちゃったの?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ