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言葉で聞かせて

第9章 鳴き声、泣き声


僕の頭によぎったのは1人だけ


「ねぇ敦史、その人の名前わかる?」
「あ?……っとなんだったかな……なんとか『子』だったような……」


1夜だけの女性の名前を覚える気もないのか敦史の記憶は酷く曖昧だった

でも僕が知りたかった情報は出てきたからいっか


レイナ、じゃなかった


「そっか。そしたら知らないな。僕が最近仕事外で名刺を渡したのは『子』がつく名前の方じゃなかったから」
「そうかよ。じゃあ誰かからの紹介だったのかもな」
「そうだね」


僕らのその話はそれでおしまい
後はひたすら他の仕事の話をしながら職場に向かった



お店に入ると店長の三崎さんが僕達に話しかけてきた


「流星、聖夜」
「はい、何でしょう?」


煙草を吹かしながら顎で付いて来い、と指示され僕らはお店の事務所に入らされる


「お前らに忠告しておきたいことがある」
「あぁ?」
「忠告、ですか。それは穏やかじゃないですね」


再び煙草を吸い込んで煙を吐き出した三崎さんは灰皿に煙草を押し付けながら話し始めた


「最近ライバル店の動きがおかしい。恐らく売上げトップのうちを全員で蹴落とそうとかくだらねぇ魂胆だとは思うが」

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