
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
三崎さんの言葉を敦史が鼻で笑い飛ばした
「はっ……そんなもん昔っからだろうが」
「そうですね。今に始まった事ではないと思いますよ」
「それはそうなんだが……ーー」
三崎さんの言おうとした言葉は僕らの後ろにいた人物に遮られた
「そんなに単純な事だったたら忠告なんて言わないんだよなぁ、坊や」
僕達の頭をぽん、と叩いたその人物はこの店のオーナー佐伯さんだった
小綺麗なスーツを身につけた佐伯さんは「よぉ」と年相応の色気を纏って微笑んだ
そして三崎さんの横まで歩きながら続きを話す
「わざわざ『お前らに』忠告ってことは、お前らと何かしら関係があるみたいなんだよなぁ」
佐伯さんがポケットから煙草を出して咥えると、横の三崎さんがすかさずライターで火をつけた
「俺らが何かしたって言いてえのか?」
「敦史」
敦史が威嚇するように言うのを宥めると「そう睨むな」と佐伯さんが苦笑いする
「それが全くわからねぇんだよ。ただ、女絡みらしい、とだけは言えるけどな」
「……確かに、男性とのトラブルはあり得ませんが女性関係であれば、無いとは言い切れませんね」
「まあ、仕事柄仕方のないことだけどな?お前らはうちの売り出し双子だからね」
「なんだそれ」
