
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
「まぁとにかく、こっちはこっちで調べとくからさ。気をつけろよって話」
人の良さそうな笑顔で微笑んだ佐伯さんは「以上」と言ったきり自分の仕事用デスクに座ってパソコンに向かってしまった
「正直俺達も何もわかっていない状況なんだ。相手が何でお前らの情報を嗅ぎ回ってんのかもわからない」
三崎さんがフォローするように放った言葉に僕は引っかかるところが
「それでは、先ほど仰られてたライバル店という括りは関係なく、個人的な恨みの可能性もあるということですか?」
三崎さんは小さく溜息をついた
「現状は何とも言えない。ただ、可能性が無くはない」
「……」
最悪だ
個人の恨みごとでお店にご迷惑をおかけするわけにはいかないのに
「わかりました。僕らも少し気をつけて見てみます。失礼します」
「……」
僕が頭を下げると、敦史は何も言わずに踵を返した
雰囲気で敦史が僕と同じことを考えてるってわかる
「困ったね」
「あぁ。だが……」
敦史は首を左右にコキコキ鳴らす
「誰が誰に、っつーのがわからないんじゃ動きようがないな」
「そうだね」
「怪しい客っつっても最近は何ともなかったし」
「うん……」
