
言葉で聞かせて
第10章 再来
家に戻った俺たちは未だ震える千秋の前に座って頭を下げた
「ごめんなさい、千秋さん」
「悪かった」
涙目ながらも何故謝られているのかと動揺している千秋に悠史が優しく微笑みかける
「わからないならいいんです。記憶が戻った時にはわかるでしょうから」
そう言うと千秋は納得はしたが気にくわないのか少し口を尖らせた
『僕はまだ貴方達のことを何も知らないのに、貴方達は僕のことを何でも知っていて不公平です。記憶がなくなる前の僕は知っていたんでしょうけど』
いつもより少し雑なその文字がやたら可愛くて顔が緩む
「ははっ自分にヤキモチ焼いてんのか?」
「ゆっくり知って行って頂ければ大丈夫ですよ」
「そうだな」
俺たちが笑うと千秋も笑った
だがその笑顔はすぐに曇る
『なんだか、別の人がいたところを無理やり取っちゃったみたい。自分のためにこんなにしてくれる人が、僕にはいなかったから。早く記憶のある僕にここを返してあげなきゃ』
「……」
「……千秋さんは、早く戻りたいですか?5年前、千秋さんの一番新しい記憶のあるところに」
悠史の言葉に千秋は一瞬考えるような間をおいて勢いよく首を横に振った
