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言葉で聞かせて

第10章 再来


『そんなわけないです!ずっとここにいたいくらい』


そう書いてまた申し訳なさそうに頭を垂れる千秋に心が温かくなる


本当、変わんねえな
昔も今も千秋はわけわかんねぇぐらい優しい

この暖かさに惹かれんのかな


「心配すんな、千秋。どんな千秋でも俺たちは愛してっから」


俺の言葉に小さな声で「ばか」と悠史が言う


やべ
千秋は俺たちと付き合ってる記憶ねぇんだった

ついごっちゃになっちまって

突然男に愛してるとか言われたらそりゃキモいよな


横から悠史が睨んでる


やべー


そう思って千秋の反応を伺っていると


「……」


千秋は顔色も表情も全く変えず、ただ俺たちを見つめていた

俺は悠史を見る


ーー聞こえてなかったんじゃね?

ーーそんなわけないでしょ。家の中は静かだし、聞き取れないほど滑舌悪いわけじゃないし

ーーじゃあどうして

ーー僕が知ってるわけないでしょ……もう


「千秋さん?」


悠史が恐る恐る声をかけると、ゆっくり俯いた千秋の顔が突然真っ赤に染まった


「!」


やっぱり聞こえてたか


徐々に前のめりになった千秋は最終的にはその顔を手で覆ってしまって見えなくなったが、隠せていない耳がまだ顔が赤いことを知らせた

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