
言葉で聞かせて
第10章 再来
『やっぱり、返してあげなければいけませんね』
「あ?」
『こんなに二人に愛される僕に』
「……さっきも言ったが、いつのお前だって俺たちは愛してる」
俺の言葉に千秋は俯く
『だって、僕の声は戻ってきていたんでしょう?また話せるようになっていたのなら、僕じゃだめです。大事な言葉は文字なんかでは伝わらない。それに今の僕は貴方達の好きになった僕じゃない』
そう言って俺たちを見上げた千秋は悲しそうな顔をしていて、俺は何も言えなくなった
すると悠史が隣で笑い声を漏らす
「ふふっ、千秋さんは今も昔も変わらず優しい人なんですね。大丈夫、心配しないでください。5年前の貴方も、将来僕たちと出会って恋をする運命にあるんですから。そんなに不安そうな顔をしないで。出会ってからは、余すことなく愛して差し上げますから」
悠史はそう言って千秋の手の甲にキスを落とした
そして「それにそんなことを言っていると記憶が戻った時に恥ずかしい目に遭うのは千秋さんですよ?」と笑う
敵わねえな
くそ
悔しいが、千秋にちゃんと俺たちの気持ちを伝えることができたような気がして俺は満足だった
「はっ、だな。お前は絶対記憶が戻って後悔すんぞ。眼に浮かぶようだ」
