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言葉で聞かせて

第11章 記憶


『そうですか』と引き下がってくれた千秋さんにお礼を言って食事を食べ始めた



「美味かった」
「ご馳走様でした」


僕たちが食事を終えると同じ机で本を読んでいた千秋さんが顔を上げて微笑む

食器を片付けてくれる千秋さんを尻目に敦史が立ち上がった


「先に風呂入るわ」
「うん」


そう言って敦史は廊下の方に消えた


誰もいなくなったリビングの机で1人携帯のメールをチェックしていると、千秋さんがお茶を出してくれた


「ありがとうございます」と微笑むと千秋さんも「どういたしまして」と微笑んでくれる

そうして僕の隣に腰を下ろした千秋さんは何故か僕の方をじっと見つめている




「僕の顔に何かついていますか?」


暫くは無視を決め込んだんだけれど、流石に気になってしまってつい聞いてしまった

すると千秋さんは顔をパッと赤くして首を横に振ると、先ほどから読んでいた本を手にとる


「?そうですか」


僕が携帯に視線を落として少しするとまた視線を感じた


「千秋さん?どうかされたんですか?」


じっとこちらを見ている時は大抵感じ取ってほしい気持ちがあるから
接客業では結構よくあることなんだけど
お客さんの女性ならまだしも記憶が中途半端な状態の千秋さんじゃ何を考えているかわからない

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