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言葉で聞かせて

第3章 葛藤と誘発


俺は急いで手を引こうとしたが、それより前に千秋が頭の上の俺の手に自分の手を重ねてきた

そして恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに微笑んだ

それまでも何度も笑っていたけど、その笑顔が一番綺麗だった

また動物を愛でたい感覚に陥って、堪えきれず僅かに手を動かして頭を撫でるともっと撫でろと言わんばかりに目を細める


猫みてぇだ


段々荒くなってきた頭の撫で方にも反抗せずわしゃわしゃと頭を撫でられている様が何とも言えず可愛い

そうしてしばらく戯れてやって


「そういやお前、風呂は入ったのか?」


プルプルと首を横に振る


「そうか。じゃ、迷惑かけたお詫びに沸かしてきてやるよ。ほぼスイッチ入れるだけだけどな」
「!」


また嬉しそうな顔しやがって


俺は千秋を置いて浴室に向かった

普段ほとんど使わない浴槽はシャワーで流せば十分なほど汚れがなく、適当に流しただけで湯張りのボタンを押した

リビングに戻ると千秋が風呂に入る支度をしたのか、Tシャツとハーフパンツ、下着を持っていた


いやいや、正気かよ


「おい。お前この季節にその格好で風呂から出てくんのか?寒くねえの?」


俺の言葉に、千秋は持っていた紙に何かを書き始めた

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