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言葉で聞かせて

第3章 葛藤と誘発

『寝巻き、これしか持ってないので』
「は?お前ずっとこれ使い回すのか?」


俺の問いに千秋は頷いた


「洗濯は?」
『朝やれば夜までには乾きます』
「……はぁ……」


俺がため息をつくと、千秋は不思議そうに首を傾げた


あぁもう
面倒くせえな


「ちょっと待ってろ」
「?」


俺はリビングに千秋を置いて自分の部屋に入った


確かこのへんに……
あーあったあった

これと、これと……あとこれも


幾つかの長袖Tシャツと少し厚手のバーカーを持って、リビングに戻る


「ほら」
「?」
「やるよ」


千秋は驚いた顔をした


『こんなに貰えません』
「いいから。どうせ俺が着ないやつだし』
「……」


千秋は暫く黙って渡された洋服を見つめた


『それじゃあ、頂きます』
「おう」


ようやく決着が着いたところで丁度風呂が沸いた事を告げる電子音が流れた


「ほら、風呂入ってこい」


こくん、と頷いて浴室へ向かう千秋は途中で振り返って


『ありがとう』


という紙を一瞬見せた

そして再び浴室へ向かった背中は、少し照れくさそうにも見えた


悠史の気持ち、少しだけわかる気がする


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