言葉で聞かせて
第11章 記憶
僕の答えを聞いた千秋さんは納得のいかない、というような顔をしている
望んだ答えが得られなかったのかな
何て答えて欲しかったんだろう
僕はなんと言えばいいのかわからず千秋さんの反応を待つ
『キ』
「?」
それだけ書いた千秋さんは手を止めてしまう
躊躇って躊躇って
もじもじと身体を揺らしている
『キス や その先も 』
長い時間かかって漸く書き出された事に僕は驚いた
「……気になるんですか?」
聞き返すと千秋さんはこくん、と小さく頷く
それって期待してもいいんだろうか
千秋さんが記憶を無くしても僕たちのことを好きになってくれたって
僕は千秋さんの気持ちを試すように微笑んだ
「してましたよ。キスも、その先も」
「!」
千秋さんの顔が赤かったのはこのことを聞きたかったからか
確かに千秋さんならこんなこと、普通には聞けないよね
真っ赤な顔をして俯いてしまった千秋さんに僕は追い討ちをかける
「してみますか?キス」
「!!」
千秋さんは勢いよく顔を上げた
僕は優しく微笑む
「自分が本当に男と交際していたのか、興味があるんでしょう?」