
言葉で聞かせて
第11章 記憶
ーーお前の悪い癖だ。うだうだ考えすぎなんだよ
それだけ言って僕の返事も待たずに敦史は千秋さんに優しくキスを落とす
あぁやっぱり
敦史は絶対に僕じゃ敵わないところを持ってる
羨ましいな
「そうですよ、千秋さん。僕達がたくさん愛してあげます」
所謂お姫様抱っこをされている千秋さんに近づいて僕も背中に手を添える
「嫌なら拒んで良いですよ」
僕を大きな目で見上げた千秋さんは顔を近づけても避けることなんてなく、むしろ自らその目蓋を閉じた
柔らかい唇に触れて離れる
恥ずかしそうに視線を泳がせている千秋さんが愛しくて
記憶をなくしているから今は、と遠慮していた自分が酷く馬鹿馬鹿しく思えた
「行くか」
敦史の一声で千秋さんの部屋に移動する
千秋さんの記憶があった時には暫く使っていなかったけれど、記憶をなくしてまた使い始めたベッドからはいつもとかわらない千秋さんの匂いがした
敦史が千秋さんをベッドに下ろす
お風呂上りで適当なTシャツを着ていた敦史はそれを潔く脱ぎ去った
筋肉質な敦史の上半身に見とれている千秋さんを尻目に、僕はまだ着ていた白いシャツを脱ぐ
